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お正月は家で遊ぼう!-「かくれんぼ」と「だるまさんがころんだ」と「ババぬき」

 いよいよ12月。2020年、令和2年もあと少しですね。今年の年末年始は家にいることが多くなりそうです。そこで、ぜひご家族で昔ながらの遊びをすることをご提案します。

 

 なぜなら、タイトルに出した、「かくれんぼ」や「だるまさんがころんだ」、そしてトランプの「ババぬき」は、神経系をトレーニングし不安やトラウマの予防や癒しにとてもよい遊びだと思うのです。

 かくれんぼについては、すでに書きました。(『子どものセラピーにおける「宝探し」と「かくれんぼ」』参照)  虐待をはじめ、悩みや問題を抱える子どもと遊ぶと、かくれんぼや宝探しをしたがることが多いのです。それは「ポリヴェーガル理論」という神経系の理論から見ても、意義のある遊びだという考察をしました。「ポリヴェーガル理論」では、交感神経と腹側副交感神経を活性化する遊びを「神経エクササイズ」と言います。トラウマ、恐怖、不安に陥ると、生物は活動をシャットダウンして動かなくなります。背側迷走神経が活性化して、活動停止、コミュニケーション停止になるのです。この状態が危機が去ってからも続いているのがPTSD、あるいは様々な不安症や恐怖症、うつやパニック状態につながるのです。

 その状態から癒されるのは、身体をふるわせて、恐怖時に活動できなかった交感神経系のエネルギーの開放を徐々に行うことだと言います。私の合気道セラピーの理論的背景のひとつにもさせてもらっています。

 さらに、恐怖時に背側迷走神経が活性化すると腹側迷走神経は働かなくなるのですが、これは他者を信用し安心して楽しくコミュニケーションする働きを担っているとのことです。恐怖やトラウマで苦しむ人が、表情が乏しく楽しむことができず、人を信用しなくなるのはこの神経系が働かなくなっているからだそうです。

 

 遊びは心理療法ではプレイセラピーとして行われますが、もちろん、心理療法という専門的な治療時空だけでなく、日常での遊びも癒しや回復の力を持っています。「ポリヴェーガル理論」では上記したように「神経エクササイズ」として、不動状態から身体を動かず遊びの有効性が述べられています。その例として「だるまさんがころんだ」が、挙げられています。(アメリカにも「だるまさんがころんだ」ってあるんですかね?それとも翻訳のときに「だるまさんがころんだ」としたのでしょうか?海外の遊びに詳しい方はご存じ?)いずれにしても、動かない状態から解放される遊びって多いですね。缶けり、氷オニ、ドロケイ、などなど。

 これらは、不動状態と恐怖の結びつき、つまりトラウマ状態からの開放を促す古来からの知恵なのでしょう。

 加えて、私はトランプの「ババぬき」がとてもよい遊びだと思っています。「だるまさんがころんだ」が不動状態から交感神経を活性化しその楽しさで腹側迷走神経を活性化する遊びだとしたら、「ババぬき」は自分の表情を出さないように不動化しババをひかせるという、不動状態とその開放をわくわくして行う遊びだからです。さらに、相手の表情を読んでババをひかないようにするというコミュニケーションのトレーニングにもなっているのです。相手の表情を読むというのも、腹側迷走神経の働きです。それを本気のだましあいではなく遊びで楽しく行うことで、交感神経と腹側迷走神経の活性化につながるのではないかと思うのです。ポーカーなどほかのトランプも同様ですが、ババぬきは順番が回ってくるごとにそのはらはらどきどきと表情コミュニケーションができるのが良いところだと思います。あと、ルールが簡単なので、小さい子でもできることもありますね。

 

 不登校やひきこもりの保護者から相談を受けることが多いのですが、まずは不安や恐怖を弱めるために、不動化から楽しく解放される遊びや表情の読みあいの遊びをすることがよいのではないかと思います。勉強や登校刺激は、背側迷走神経が優位になっている人には、恐怖と不安をかき立てるものでしかありません

 ただ、そういう状態の人は、不動化からの解放や表情コミュニケーションの遊びも拒否することが多いのです。コンピューターゲームははまるのに、相互コミュニケーションするボードゲームやカードゲーム、身体を使う遊びをしたがらないのも、交感神経や腹側迷走神経が働いていないからなのでしょう。(コンピューターゲームは、おそらく、背側迷走神経優位でもできる限られた遊びなのではないでしょうか?これは神経学者の方に調べてもらいたいものです。)

 したがって、まずはコンピューターゲームからボードゲームやカードゲーム、そして「かくれんぼ」や「だるまさんがころんだ」のような身体を使った遊びができるようになることからだと思います。

 プレイセラピーへの批判として、ただ遊んでいるだけと思われることがありますが、トラウマや不安にとらわれた人の神経系からの反応を変えていくには、ただ遊ぶことは何よりも有効な心理療法なのです。また、そういった悩みや症状がない子どもでも、今回取り上げたような遊びはトラウマや心理的な問題の予防にもなると思います。